「既存住宅という国民の重要な富・資産」が、”新築好き好き産業”に移転している日本の愚/感染症専門医岩田先生とのFB会話
神戸大学病院感染症内科教授の岩田 健太郎先生。私はファンなんですよね〜(*^^*)
https://gentosha-go.com/ud/authors/5edda5bf7765614ced010000
岩田先生の問題提起:
物価が上がりつつあるときに、ちょっと考えておきたいのは「価値への対価」です。
例えば専門家の専門知は実に安く買い叩かれています。取材を受けてもタダ、テレビに出ても出演料はないか、お笑いタレントよりずっと安い。
そうやって「価値」に対するデフレ構造が長期に渡って続いてきましたが、そろそろ価値に相応した値段をつける時期に来ていると思います(医療も同様)。
そのことは、僕らの購買構造の変化も意味します。
英国に住んでいた91年、人々がバブルだった日本よりもずっと「新品」を買わないことに驚きました。
当時の日本は車は新車、住居は新居が偉い、の時代でした。
今はメルカリやシェアやリフォームがだんだん普及してきて、「価値のあるものを長く使う」こと、「新しさ」だけではなく「真の価値」も見ることもできて来ていると思います、特に若手世代。
日本社会はバブルのそれに比べれば絶対に成熟しているのだと思っています。
だからこそ、価値にはそれ相応の対価、も常識化したいところです。
残念ながら、多くの社会や産業でものを決めているのはバブルの記憶を持っている「昔の人」たちなのですから。
マバシ君のコメント:
岩田先生がおっしゃりたい趣旨と若干ずれてしまって恐縮ですが「(一生のうちで最大の買い物である)住居は、新居が偉い」は、人々の好み(日本人は極端な新築好き)もありますが、実は巨大建売・アパートメーカーといった”新築好き好き”産業による、与党・財務省/国土交通省等への強烈なロビー活動によって維持されているんですよね。
新築を中心とする住宅ローンも、金利控除後にはなんと実質マイナス金利(!)を最近まで実現していました。政府は極端に新築を奨励しているということです。
財務省が決めていますが、今だに木造建物は(税務、ローン上は)22年で無価値になる構造になっています。いまどきたった22年で使えなくなる木造建築物なんて、ありません。
内閣府国民経済計算の「国富(国民の富の合計)〜の固定資産(土地除く)」も、これだけ新築の建物を創りまくっているのに26年間微増程度で趨勢は横ばいです。
つまり新築を作るのと同じスピードで、既存建築が減価し木造22年・軽鉄27年・重鉄34年・RC47年で価値ゼロになっているから。
ということで、無価値な”20年を超えた実需の木造建物” 担保にローンを出すところは無く(あっても金利が高いとかローン期間がとても短い)て、売買も木造築20年を超えると実質土地の取引であり、建物は無価値です。むしろ取り壊し代を差し引かれたりする。
法律やルール、税制などで国を挙げて新築建設を奨励しているので新築を建てるもんだから、”新築好き好き”産業が儲かります。
一方、ご覧になっていた英国の住居市場は、キチンと建てられた立地の良い物件は、新築から徐々に市場取引価格は減価しますが30年とか40年を過ぎると徐々に価値が上がる市場になっています。これは英国人の好みもありますが、そもそも築古でも建物価値がキチンと制度的に認識され、建物担保でローンが借りられること、が大きいんですよね。米国も同様です。ちなみにそのような国々に、日本のような超巨大”新築好き好き”産業はありません。
これらの国は、国家として国民の富を増やすことにフォーカスしているんですよね。一方で日本は、国民の富を減らしても、”新築好き好き”産業に利する制度。なので彼らは超巨大な企業が多いです。本来国民の富であるはずの「国富(国民の富の合計)〜の固定資産(土地除く)」が、当該産業に移転し続けているから、というのが実態です。
国民の富の中核資産である中古住宅の流通を促進するために、税法、オープンな価格情報、ローン、プロの建物鑑定人サービスなどさまざまな社会的な仕組みで支えています。
ということで住宅に関して言うと「バブル時代の昔の人の好み」で決まるのではなく、「”新築好き好き”産業の意向に沿った日本の制度」であり、まず構造的に変わることは無いでしょうね。たいへん残念なことに。
岩田先生コメント:
ぼくの想像ですが、空き家の増加や人口減、人々の新居へのニーズの低下で、企業も変わらざるを得なくなると思います。
マバシ君コメント:
そうあってほしいですね。私もそう願っています。
一方で、これだけ空室率が上がり人口が減り続け、住宅戸数だけ見たら日本にはもう新たな住宅は不要なのに、今日も新築を作り続けています。作り続けないと”アパートや家を新築する企業”がモタないので。
”その企業”は「自分が生き抜くことが第一義」なので、最後の最後までその強いパワーを使って、これからもずっと政治や官僚機構をも操り税制や各種控除などの政策実行を通して「新築好き好き」を続けようとするでしょう。
「こうなったら全体最適で合理的なはずなのにな」ということが実現しないのは、不動産業界”でも”、いっしょと思っています。その”与件”の中でどう生き抜いていくかということかと思います。
※別の話で申し訳ないんですが、最後の部分は、岩田先生が常に”厚生労働省や保健所の医療行政は変だ!”と常々言い続けてる部分に言及しています。
彼は、著名な感染症の専門医として、理系の医療サービス提供者としては優秀な方と思われますが「医療サービスという商売の収入の本質的構造」が、イマイチ分かってない気がします。要するに「ガード下居酒屋で会社の文句を言っている従業員」なんですね。
医療サービスの入金先は、3割が利用者、7割が公的医療保険です。つまり利用者からだけの収入では商売が成り立ちません。(美容整形とか自由診療とかがそうですけど規模的にはマイナーな存在。)
で、7割の入金元は公的医療保険で、それは国が管掌してますから、それを背景に厚生労働省や保健所はいろんなことを医療機関に求めます。そこには非合理性や不具合もあるんだけど、要するにそのカネで自分は食ってるわけです。従業員が会社に文句を言っているのと本質的にはおんなじなんです。従業員は会社に文句があるなら社長になってその不合理を直せ、なんて、勤め人時代に言われました。「それができるまでは、文句言ってないで働け!」ということです。
岩田先生の場合は、そんなに変えたければ制度を作る側、例えば政治家になれば!?、ということなんですね。
Amazon ランキングNo.1! 拙著もよろしくです!
https://www.amazon.co.jp/%E9%A6%AC%E6%A9%8B-%E4%BB%A4/e/B09V599WLT
■文字数(スペース込み)
2966
■文字数(スペース無視)
2956
■行数
160
■段落数
53
■原稿用紙換算(400x?枚)
8